イエナプラン 教育を実践!「大日向小学校」設立の経緯と背景 by 学校づくりラボ【1】中川綾さん

子育て

2018年12月26日 text by:UZUZU編集部

イエナプラン 教育を実践!「大日向小学校」設立の経緯と背景 by 学校づくりラボ【1】中川綾さん

まちづくりを事業とするUDSが「新しい教育の選択肢を増やす仕掛け人に学ぶ」として開催した『学校づくり』ラボ。第一回ゲストは、2019年春、長野県佐久穂町に日本ではじめてのイエナプラン教育の小学校を開校する設立準備財団代表の中川綾さん。2018年12月25日付で、長野県知事より「 大日向小学校 」設立認可が正式に下りたことを受け、設立の経緯や開校準備など「学校づくり」背景を聞いた第一回学校ラボのイベントレポートを公開します。

日本にイエナプランの小学校を。2019年春「大日向小学校」開校

2018年10月24日に開催された『学校づくり』ラボ 第一回ゲストは、一般財団法人佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団代表理事の中川綾さんでした。
一人一人を尊重しながら自律と共生を学ぶ「イエナプラン教育」を日本ではじめて実践する私立小学校を設立するプロジェクトの中心人物です。

首都圏に保育所・学童を展開するグローバルキッズ(東京・千代田区)代表取締役の中正雄一さんが「保育園の次の学びの場づくりを」と設立者となり、中川綾さん、イエナプラン教育の第一人者リヒテルズ直子さん(特別顧問)とともに、設立準備財団を立ち上げました。

校舎は、2011年に閉校した長野県・佐久穂町の「佐久東小学校」の廃校校舎を利用。その校舎のリノベーションをUDSが担当します。

中川綾さんを代表とする設立準備財団は、佐久穂町の住民のみなさんへ、何度も何度も丁寧に説明会を繰り返し、学校の名前も地域のみなさんと話し合って決めました。

そうして決まった学校名は、「学校法人 茂来学園 大日向小学校」。

2019年春の開校を目指して、学校法人と小学校設置の認可を長野県に申請。
2018年12月25日付で正式な認可が下り、開校が決定しました。

自然豊かな長野県佐久穂町の廃校を利用して、2019年春、大日向小学校開校予定。


イエナプランスクール設立を目指す、中川綾さん

イエナプランスクールを設立を目指すこととなった、中川綾さん(写真右)。
どんな女性なのでしょうか?

中川綾さんは、大学卒業後「体育教師」としてキャリアをスタート。

泳げない子を泳げるようにすることが得意な先生だったそうです。
私立の中高一貫校、特別支援学校、定時制高校など…様々な学校で働く中で、日本の学校に、一斉授業だけでない、多様な学びの場を実現できないか?と大学時代から考えていた課題意識を実現する道を具体的に模索し始めたそうです。

「人は学びたいことを学ぶことができれば、自発的に楽しく学ぶことができる。
それぞれに合った学び方を、学ぶ人が選択できる環境をつくりたい。
チャンスがあれば、新しい学校を作ってみたい。」

中川綾さんは、ずっとそんな風に考えてきたと言います。


教師として日本の教育の実情を知る中で、教育に関わる人をサポートしたり仕組みを提供することも大事なのではないかと考え、NPO法人設立を経て、2009年には株式会社アソビジを設立しました。

ジェネレーターとして学校ラボを進行するUDS中川敬文さんは、学校ラボの冒頭、次のように中川綾さんを紹介しました。

「教師と経営者の経歴を持ち、
 組織やまちづくりのファシリテーターとしても優秀。
 ・・・類まれな女性です。」

イエナプラン教育との出会い

イエナプラン教育の日本への啓蒙活動を続けているリヒテルズ直子さんの代表的著作


中川綾さんは、アメリカ、オランダの学校を視察するなどして、世界のオルタナティブ教育(非伝統的な教育)の事例を学びながら、理想とする教育環境をどうしたら実現できるのか考え続けたといいます。

15年ほど前に、、「オランダの教育」著者で日本でのイエナプラン教育普及の第一人者と知られるリヒテルズ直子さんが来日。 中川綾さんは、その講演会運営を手伝うことになりました。それをきっかけに、イエナプラン教育に感銘を受けたといいます。

「イエナプラン教育を学び、知れば知るほど、よくできていると感じる。
 時間はかかるけれど、このコンセプトを日本に広めて
 日本の学校の中で、体現できないか」

そう考えた中川綾さん。
リヒテルズ直子さんらと共に2010年、日本イエナプラン教育協会を設立。
以来、イエナプラン教育についての理解を深める勉強会を展開し、現役の先生方や保護者と共に考え、 支え、広げていく活動を日本で展開してきました。

イエナプラン教育とは

中川綾さんが理事を務める日本イエナプラン教育協会HP

ドイツで生まれ、オランダで発展し、現在、世界中から注目を集めている「イエナプラン教育」。対話・遊び・学習(仕事)・催しを循環させた学習活動の中で、一人ひとりの個性を尊重しながら自律と共生を学ぶ教育法といわれています。

多民族が共存するオランダでは、憲法で教育の選択の自由が保障されており、モンテッソーリ教育や、イエナプラン教育など様々な教育方法を採用した学校があります。そして、誰でも自由に、宗教や教育方針などによって学校を選ぶことができるそう。

現在、オランダでは小学校を中心に、イエナプラン教育が採用された学校が220校以上もあるそうです。オランダでは、各学校の裁量権が大きく、目標モデルに対し、それぞれの学校がどう取り組むかは多様だといいます。

これじゃないといけない、という決まった教材がない。
コンセプトを実現するためならば変化することや広くから学ぶことを当然としている。

受容性が高く変化に柔軟な「イエナプラン教育」なら、
日本で、その地域に合うように、
小学校課程の教育と融合させることができる。

中川綾さんはそう考えました。
あたらしく設立予定の小学校は、一部の特殊な教育を望む人のためではなく、
日本の学習指導要領に基づいた教育を行いながら、イエナプラン教育を実践することを目指しています。

日本の公教育には、もっと選択肢が必要

中川綾さんは、イエナプラン教育のコンセプトを言語化した「イエナプラン教育の20の原則」をぜひ読んで欲しい、と『学校づくり』ラボの参加者に呼びかけました。

UDS代表の中川敬文さんも、オランダの学校を視察した時の印象を話します。
個で学ぶ時間とみんなで学ぶ時間が尊重されていて、対話の場所もしっかり設けられている。学校の空間の作り方も、日本とは違うといいます。

「オランダの学校で、子供達が廊下に出て、かたつむりをずっと見ている。
 『どうしてヌルヌルしてるのか?』
 『女の子なのかな?男の子?』
 『何グラムあるのかな?』
・・・色々なことを言いながら、子どもたちが徹底的に考えている。
先生は、じっとそれを見守って、しばらくたつと新しい問いをたてる。
──そんな豊かな学びがあった。
子どもからの「問い」を尊重する、イエナプラン。
みんなぜひ、オランダに見に行ってほしい!」
(中川敬文さん)

中川綾さんも、日本にイエナプランスクールを設立する意義について、語りました。

「日本の公教育にも、もっと選択肢が増えると良い。
 イエナプランがどういう教育なのかは、実際に見て、
 体感してもらいたい。

 イエナプラン教育のモデル校として大日向小学校が役割を果たせれば、
 オランダまで行くのは難しい方でも、
 佐久穂町を視察してくれた人がまた現場で実践しようとしてくれるはず」


大人も子どもと学び、共に学校をつくるプロジェクト


大日向小学校紹介動画 10分
出典: 一般財団法人佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団 http://sjsef.jp/

中川綾さんらは、あらたなイエナプランスクールのコンセプトを伝えるため、学校を紹介する動画をつくりました。
また、地域のみなさんへ学校準備の様子をお伝えする「設立準備新聞」を発行したり、開校まで校舎を利用してイエナプラン教育を体験できるプログラム「季節のがっこう」をこれまでに6回開催。
イエナプランを理解してもらうための機会をつくり、そしてあたらしい学校が目指していること、その思いを広める活動を展開しています。

学校紹介動画は、大日向小学校の思いが詰まっています。
「季節のがっこう」に参加した子どもたち、あたらしい学校を応援している町のみなさん、保護者の皆さんの声もたくさん紹介されています。

「親が同じように子どもと一緒に
 常に学んで行く機会を持ち続けていくことは大事」

「頭ではわかっているつもりだった教育法だったが、
 大人も対話したり、発表したり、
 そうした体験をすることで、
 子どもたちが、あたらしい学校で学ぶであろうことを理解できた」

こんな大人の感想が印象的です。
佐久穂町イエナプランスクール設立は、大人も子どもと学び、共にあたらしい学校をつくるプロジェクトなのだと感じました。

「誰もが、豊かに 、
 そして幸せに
 生きることのできる世界をつくる 。」

それを目指してイエナプラン教育を実践しようとしている大日向小学校。

「学校の中でしっかりその経験を体感できれば、その経験をもとに
幸せで豊かな世界をつくっていこうとする人が育つだろう。
学校を作って終わりではなく、そこからが始まり。
その世界の実現のために何百年と続く営みになるようにしていきたい」
(中川綾さん)

その挑戦を、しっかり応援したいと参加者が感じた『学校づくり』ラボでした。

学校ラボ参加者で、グループディスカッションも

第1回『学校づくり』ラボには、学校・学童などの教育関係者、教育系の新規事業を検討している人、イエナプランスクールに関心のある保護者、LEAGUEで働くフリーランスの人など…さまざな立場の人が、およそ30人ほど参加しました。


ラボの最後では、ジェネレーターのUDS中川敬文さんの呼びかけで「新しい学校にどうやって生徒を集めていくか?」という課題が出され、参加者全員でアイデア出し、ディスカッションしてグループごとに発表しました。

SNSを活用したPR、現地見学会の実施、体験スクール…等さまざまなアイデアが参加者からも発表されました。

「皆さんから出たアイデアと同様、私たちもさまざまなことを考えて、動いてきたので、皆さんにも、あたらしい学校を応援してほしい」と中川綾さん。

UDS代表の中川敬文さんは学校ラボ参加者に向けて、「子ども達が選べる、新しい教育の選択肢を増やしていきたい。同じような問題意識をもっている人たちが集まって、ゆるやかにつながる同僚のように、感じて、学んでいける場にしてゆきたい」と伝えました。


第2回以降の『学校づくり』ラボ イベントレポートも、あわせてご覧ください。

第2回 「新しい高校づくり」〜子供達が変わる中高生キャンプから!〜
(ゲスト:一般財団法人活育教育財団 代表理事 野崎 智成さん/株式会社zero to one 代表取締役CEO

第3回「レジデンシャルカレッジ の可能性」〜ハーバード大の寮生活の学び体験を日本へ〜
(ゲスト:一般社団法人HLAB代表理事・小林涼介さん)


関連情報

新しい教育の選択肢を増やす仕掛け人に学ぶ『学校づくり』ラボレポート
(2018年10月24日〜2018年12月6日 全4回)


第一回ゲスト: 中川 綾 (Aya Nakagawa)さん
一般財団法人佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団 代表理事 )
株式会社アソビジ 代表取締役)

佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団公式
  設立準備近況報告や、説明会、見学会情報があります。

リヒテルズ直子さんの著作
「いま「開国」の時、ニッポンの教育 」(2009/4/26発行)
「公教育をイチから考えよう」(2016/8/12発行)
「親子が幸せになる 子どもの学び大革命」(2018/9/2発行)


UZUZU編集部

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