発展の中でいまだ貧富の格差が大きいインドでの子育てとは? 日本人のための幼稚園選び【インドの子育て】

世界の子育て

2019年9月30日 text by:永原薫

発展の中でいまだ貧富の格差が大きいインドでの子育てとは? 日本人のための幼稚園選び【インドの子育て】

世界各国で子育てしている日本人ライターや現地の方に、現地の子育て情報や、その国ならではの雰囲気を伝えてもらう「世界の子育て」シリーズ。今回は、シンガポールからインドに移住されたKAORUさんに、インドの幼稚園事情について語っていただきました。

インド・デリーやグルガオンで外国人が選択できる幼稚園は?

夫が転勤族のため、4年半住んだシンガポールを離れ、2019年9月からインドのグルガオンへ3歳の息子と共に引っ越しました。
今回はインドでの幼稚園事情や親子生活環境についてレポートします。

インドは国土も広く地域によって様々な違いがありますが、私が住んでいるのはグルガオンという、デリー(首都)から車で45分くらい離れたデリーの郊外と言われる地域です。
この10年くらいでグルガオンは急激に発展し、砂漠状態だった地は今ではインドのイメージとは大きく違い、新しい高層ビルや綺麗に整備された片側3~4車線の道路、大型のショッピングモール、富裕層や外国駐在員向けのコンドミニァが立ち並ぶエリアとなっています。

インドのグルガオンやデリーでの私たち外国人が選択できる幼稚園は、
・インターナショナルスクール(私立幼稚園)
・欧米系インターナショナルスクール
・文部省認定日本人小学校付属幼稚園
が挙げられます。

ローカルの子も多い「インターナショナルスクール」。日系インターナショナルスクールは英語教育がメイン

インドでは、インターナショナルというのは実は私立のこと。インターナショナルという名がつくから言って、アメリカンスクールやブリティッシュスクールのような、いわゆる多くの方が想像する一般的なインターナショナルスクールとは言えません。そのため、インターナショナルという名であっても生徒さんはほぼ地元のインドのお子さんという場合もあります。

ローカルの子が多いスクールではヒンディー語も多く飛び交うので、ヒンディー語が全くわからない外国人の子が通うのはハードルが高い可能性もあります。しかし様々な国の子が通っているスクール(私立幼稚園)は英語がベースなので、子ども達も英語で会話をして遊んだり、ヒンディー語のレッスン時間が組み込まれたり、また、インドといえばボリウッドダンスなので、ボリウッドダンスレッスンを受けられたりと、子ども達が自然にインドの言葉や文化に触れられる時間がカリキュラムの中に組み込まれています。

一方、欧米系のインターナショナルスクールの場合には、欧米人のお子様が多く通うため、英語での教育がメインとなります。

2017年に新しくできた日系インターナショナル幼稚園には現在、日本人の子ども達が通っていますが、先生はインドの方で、日本人の先生が1人と日本語が堪能なインドの先生が1人という環境で、スクール内での先生との会話はすべて英語です。こちらは大型のインターナショナルスクールとは違い、1クラス12人という少人数のため、クラス自体は横割り保育ですが、遊びの時間や学年関係なく一緒に活動する時間も多く、縦割りのような感覚で子ども同士一緒に遊んでいます。

クッキングの時間が設けられており、お月見の日にはお団子の代わりにスイートポテトを丸くして食べたり、敬老の日に向けて日本にいる祖父母にお手紙を書き地元の郵便局に出しにいったりなどの経験をします。

英語と算数の教育は早い段階から幼稚園でも取り入れており、数字に触れ遊びながら徐々に覚えていくように各幼稚園で取り組んでいます。

幼稚園以外でも英語と算数の放課後のお稽古もあり、算数の問題を解くということは、分析→理解→問題を理論的に導く能力が備わると考えられているため、そうしたお稽古に3歳から通える環境があります。塾の前を通ると、算数の全国大会を受け良い成績をおさめた上位の子の名前が張り出されていたのを目にします。その中に、インドの子ども達に交じって日本人の名前を1人見かけたことがあり、インドの国で頑張る日本人のたくましい姿が目に浮かびました。

日本語での教育がメインの「日本人付属幼稚園」は日本の文化を尊重

文部省認定の日本人小学校付属幼稚園には、小学校と共有の大きな芝生の園庭があり遊具もあります。インドでは一番暑い時期は40度近くになるため、年齢の低い園児は外で長時間遊ぶと疲れてしまうこともあり、外遊びを30分くらいにしたり、子ども用のプールを出して遊んだりします。園では日本人又は日本語が堪能なインド人の先生が担任につき、日本人幼稚園内は日本語での教育がメインになります。日本の絵本もたくさんあり、子ども達は日本の文化を尊重した教育を受けることができます。

インドの幼稚園はどこもディーディーさんというお世話専門のインドの方が各クラスまたは園にいます。子ども達はお弁当持参なので、ランチタイムのお世話やお手洗いのお世話、掃除をディーディーさんがしてくれます。先生が何でも行う日本のスタイルとは違いますね。

日本人小学校付属幼稚園で驚いたのは、インドという場所柄、セキュリティーがかなり厳しく、また、園に通じる扉は防弾・窓も防弾という点。以前バングラディッシュで発生した駐在員に向けられたテロの直後に、アメリカン大使館と文部省から更なるセキュリティー強化の勧告があったそうで、教室の窓も外から園児の姿が見えないよう高めの位置に付け替えたとおっしゃっていました。しかし、教室内は特に暗い感じもせず、明るい太陽の光が入り込む印象でした。

他の幼稚園でも必ずセキュリティーがあり、IDがないと入れないなど安全面を強化しているように見受けられました。

インドは発展していっていますが、貧富の格差がいまだに顕著に表れる国です。路上暮らしの家族もあったり、小さな子を連れて物乞いする人や裸足で生活をし思うように教育を受けられない子ども達の姿も日々見かけます。親としてとても複雑な思いに駆られますが、現実問題としてとらえなければならないと思っています。

受けられる教育に感謝し、これから未来を担う子どもに国際人としての教養を身に付けてほしいと思うと同時に、人種や貧富の問題にも直面し、子どもなりに感じること、疑問の想いなど素直に受け止めながらたくましく育っていってほしいと願っています。

KAORU シンガポール在住4年、一児の母。 渡星前は、メイクアップアーティストとして活動。大学卒業後、撮影現場にて、大手広告、ポスター、CMに携わる。 シンガポールで妊娠出産し、現在3歳の息子を子育て中。 子育てママとしての新たなステージに立ち、シンガポールにてメイクアップ活動を再開。 ライフステージの変わる女性へ、美とマインドのサポートを提供中。

KAORU

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